恋愛 ~野口晴哉著「大絃小絃」~
《野口晴哉著 大絃小絃より》
恋愛は美しい。花だからだ。サラリと散る桜は美しい。山吹の実を持たぬのも良いが、腐って木についてる花は醜い。
なぜ恋愛は美しいか、花だからだ。花は所詮散るからだ。散らなければ花ではない。散る故にこそ、春に至らば百花自ずから開く。
恋愛は楽しい、裡の要求が実現してゆくからだ。恋愛は苦しい。抑える心を押し退けて進むからだ。
しかし、恋愛の裡に冒険を満たす心が混じっていないか。所有欲が変形して住んでいないか。エゴイズムが根を張っていないか。楽しむも、苦しむも良いことだが、一応の反省は要る。
冒険を満たす心も、完全を追う心も、恋愛する心も、その出発点は同じだ。同じであるが故に、恋愛の裡にエゴイズムが動く。
魂の共感。お互いが、お互いに依って、伸びゆくものを感じたら積極的に一緒になるのも良かろう。
しかし、これが終点ではない。いつになっても柳は緑であり、花は紅である。そんなことを言っては風紀が確立しないという人もある。しかし、恋愛は風紀から生じたのではない。
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