風邪について ~野口裕介先生(ロイ先生)講義録~

≪ロイ先生講義録より H23年10月≫

風邪について


昔、八十年か九十年前でしたが、スペイン風邪というのが流行って大騒ぎしたことがありました。


八、九十年前と言いますと大正の終わり頃ですか、強烈な風邪が流行った。子供や老人に多かったのですが、肺炎を起こして三日、四日で死んでしまう。


世界中で大流行して、数千万人の人が亡くなった。日本でも何十万人の人が亡くなったと言われています。これにスペイン風邪と名前をつけている。


「どんな風だったのですか」と父に聞いたことがあります。父はわりと若い頃からこういう仕事をしていましたから、「昭和の始めに観たことがある。鎖骨窩が急に硬くなって硬張ってくるんだ」と言っておりました。


つまり呼吸器の動きが極端に鈍くなる状態と言えるのかもしれませんが、そうすると肺炎になる。


そして、肺炎を起こして瞬く間に死んでしまう。だいたい七十年とか百年に一度くらいそういう風邪が流行っていると言われています。


まあ、おかげで人口が増えすぎなくてすんでいるのかもしれませんね。そう言うと残酷に思われるかもしれませんが、自然の掟でもあるのかもしれない。


そういうことは今までにもいろいろな形で何度も起こっているのです。ですから台風のような自然現象と捉えるべきかもしれないと思うのです。


しかし「鎖骨窩を上手に弛めると経過できる人が多かった」と父は言っていました。


中略


ただその場合に、私たちは例えば九十年前に流行ったスペイン風邪の型に似ている、だから注意をするのだと言う。


それもわからないではありません。確かにスペイン風邪のような型があって、その風邪の型が肺炎を引き起こして、人を死に至らしめるのだというのは間違いではないのかもしれない。


けれども、もう一つそこに見逃してはいけないことがあるのではないかと思うのです。


今言いましたように、胸椎七番を意識しない不安と捉えると、必ずしも風邪の菌のせいだけだというわけでもないと思うのです。


九十年前にスペイン風邪が流行った時代というのは第一次世界大戦が終わった後で、ヨーロッパは完全に破壊し尽くされた状態でした。そういうような大混乱から戻ってくる時期だったのかもしれませんが、1920年代というのは、世界中が不安状態だったとも言えるのではないかと思うのです。それは七番の異常として出てくる可能性というのはあるわけです。


今だって一つ間違えれば戦争が起こったりするのです。世界恐慌が起こったりすることはあるのです。今は皆さんあまり不安を感じていないかもしれませんが、この前のような大地震や台風の直撃で暴風雨に見舞われたような時でも、一旦その中に入り込んでしまって、それしか感じられなくなったら、それはやはり皆七番はおかしくなるものです。


ですから、そういう一つの現象がスペイン風邪の元にあるのではないかと考えることもできると思うのです。


中略


風邪も今は忌み嫌われています。それこそ風邪を引くと隔離される。電車の中でゴホンゴホンとやってみると皆逃げていく。まあ、混雑しないで却ってよいかもしれないと思わないでもありませんが、果たしてそうなのだろうか。


私は風邪も月経と同じようにいつの日かみんなにおめでとうと祝われるような存在になるのが人間にとってよいことなのではないだろうかと思っているのです。


もちろん用心するところは用心している。風邪だから放っておけばよいのだと言っているのでは決してありません。


けれども風邪を通して皆が丈夫になり、おめでとうと言うようになれば、それは人間にとって進歩であり、人間が健康に生きていく上で大変よいことなのではないかと思っているのです。


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やさしい野口整体

〜野口裕介(ロイ)先生に捧ぐ〜 Facebookページ「やさしい野口整体」に宮崎雅夕先生が投稿された記事の保存版サイトです。