桜は何故美しいか ~野口晴哉著作全集第九巻~
《野口晴哉著作全集第九巻より》
桜は何故美しいか。
散るからである。腐らぬうちに散るからである。
その桜が咲く京の嵐山。
水あり山あり、茶店に腰をおろして一献かたむける。
花も水を流れ散る。
山は動かずみどりだ。
この世の中がいつ迄つづくか。
モツアルトのフルートとハーブの為の協奏曲は、
こんな美しさと不安と永くつづかぬものを惜しむ心を表現してあますところがない。
昔道場の二階でコンサートをひらいた時、この曲を聴いた。その時、桜の花びらが窓から入り、紅茶茶碗の中に入った。その為、この曲と桜が結びつくのかと自分では思っているのだが、この曲の美しさのなかの果敢なさ、その美しさは比類ない。
レコードはラスキーヌ、モイーズのSP盤がもっとも良いが、ラスキーヌとランバルによるステレオ盤もそう劣らない。ラスキーヌ、モイーズ、ジノのドヴィッシィのトリオ・ソナタも堅固な美しさを示し、この曲と対照出来る。
写真
by Hitomi スマホ
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