更年期障碍と神経衰弱 ~野口晴哉先生語録~
《野口晴哉語録より》
更年期障碍と神経衰弱
更年期は神経衰弱症状と密接な関係がある。特に五、六月はその大部分が更年期組である。
神経衰弱というと、頭の使いすぎのために起こるように思っている人が多いが、これはそうではない。
神経衰弱になることによって通常程度の頭の使用が過労になるのであり、そのために焦る、そのためというより、ただ焦らずにはいられないのである。
それ故外から眺めて、頭を使わないようにしてやれば治療に有利になるつもりで、色々と取り計らうことは間違っている。看病の人まてが神経衰弱に羅っているようなものである。
それより何故そんなにイライラしないではいられないのか、余分に陰鬱になり余分に頭が過労するのか、それを確かめる方が本当であろう。
――略――
生きているものは死ぬことを怖がる。おそらく死んでいる者は生きることを怖がることだろう。
誰も人間は知らない世界へ飛び込むことに不安を持つもので、生きている人は理由なく安静の世界へ飛び込めず、生きて死に勝る苦痛を受けて、それでも死ぬよりはましのつもりでいるが、可笑しなことである。
生あらば生き、死来たらば死ぬつもりになって、あくせく生にしがみついていなければ神経衰弱になる人もズーッと少なくなることだろう。
―中略―
神経衰弱に精神療法がよいという人があるが、精神療法は相手の心理作用を使いこなして快復に赴かしむる技術であるから、相手の心理作用が健全でなければ奏功はむずかしい。
こういうことをいう人は神経衰弱を知らず、精神療法も知らず、精神療法を精神病療法と思い込んでいる人に相違いない。
神経衰弱は肉体現象であって、頭の異常ではない。
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