個性を知る ~野口晴哉著作全集第五巻~
≪野口晴哉著作全集第五巻より≫
個性を知る
山羊は紙を食うが猿は食べない。虎は牛肉を食うが馬は食わない。同じ水を飲んでも牛が飲めば乳になり、蛇が飲めば毒になるとか、生きものにはそれぞれの性があって、ミミズのご馳走が鼠にもご馳走になるとは限らない。
同じ人間でも芋や人参が好きな人もいれば、バターやチーズが旨い人もいる。人間にもそれぞれの性があって一人一人違う。それ故一人の性は一人のものだから個性と言うのだが、個性を自覚するかしかないかということでその人の行為も動作も又健康状態も違ってくる。
洋服でも自分にピッタリしたものを着るためには、まず自分の体の寸法を知らなくてはならない。自分が旨いものでも他人が旨がるとは限らない。自分に適うものが旨いのであるから、自分の欲するものを感じないままでは何時も旨いものは食べられない。
養生でも衛生でも治療のことでも、自分の体に適うように使わねば自分にピッタリしない。レディメードの洋服より積極的な働きを持つだけに悪いものがあろう。
教育でも健康生活でも、個性を知らない間は、よいことを沢山積み重ねるだけでは、その人のものになりその人をよりよくするためには役立たないことが多い。
体や心の長所や欠点も各人色々であるから、個人を知らない間は短を補い長を伸ばすことはできない。又多くの場合、人の短所と長所は一つのものである為、他人の考えで短を矯(た)めれば、長も失ってしまう。
やはり自分の個性を自分で知って、自分というものに目覚めて行動しなければ、全生命を溌剌と発揮して生活することはできない。
写真
by H.M. スマホ
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