呼吸と生活1 ~野口晴哉著「人間の探求」~
≪野口晴哉著 人間の探求より≫
呼吸と生活1
それ故息が静かで安らかなら心も体も穏やかな状態であると見て差し支えない。
息が乱れれば心もどこかにつかえがあり違和があると考えて良い。腹がたっても、一寸気が急いても息は乱れる。食べ過ぎても駆け過ぎても息は乱れる。
しかし息が速くなっても脈が速くなっても一息四脈を保っているなら乱れたとは言わない。
古人は「人間は十億脈を打つとその生が終える。だから脈を速くするような行いを慎しみ、心静かに息を長く保つことが長寿の秘訣である」と過労を戒め、喜怒哀楽を抑えることを説いたが、実際問題としては感情を抑えても発しても脈は亢まるものである。
しかし心臓の耐久力を十億と仮定して余分に脈を速くさせる行為を慎む可きだという考え方は本当と思って良い。
殊に心を静かにして息を長くするということは面白い。息が静かで長い人は長く生きるが、息をいつも弾ませているというような人は寿命が短い。
いや短いからいそぎ、喜怒哀楽が激しいのかもしれない。
しかし気が散れば息は短くなる。息が長く保つようなら、いくらでもつめて仕事が出来る。仕事の途中で厭きるということも息が短い為である。
日常生活に於いても息を短くするようなことを余りくり返さない方が良い。自然に息が深く静かに保つよう生活することが望ましい。悪いことだと思っていることをやっていると息が乱れる。良いことと信じている時には息は乱れない。
「良いことをせよ。悪いことはするな」ということは簡単なことだが、三才で判っても七十になっても行えないことなのである。
それ故息を保つ方法を行って体を訓練することも一つの方法といえる。
昔から健康法とか修練法とかいうと呼吸鍛練の方法が行われているがこれは良いことと思う。
近頃の運動とか体操とかに偏する健康法より、形以前の問題に触れているだけ秀れていると申せよう。人間の生命というものはそういうものなのである。
写真
by Hitomi スマホ
0コメント