わが治療の書 ~野口晴哉著「治療の書」~
《野口晴哉著 治療の書より》
わが治療の書
百人の苦しみは百人の苦しみに非ず。
一人の苦しむは百人の苦しみ也。
一人の悩み 万人のものたり。
万人の悩みは万人の悩みに非ず。
一人の悩むは世界の悩み也。
一人素直に生きざるも
是宇宙の悩み也。
宇宙の悩み 又一人の悩み也。
一人慎しみて万人靖らか也。
一人靖らかにして宇宙平ら也。
宇宙動きて我動く也。
我が動くも 是宇宙の動き也。
我が指 動くも万人の動き也。
万人の動くも一人の為也。
一人の動くも万人の動き也。
万人の一人を在らしむるは自然の息也。
治療するといふこと
自然の息に生くること也。
自然の息に生くるとは
自分の息せざること也。
自分の息の自然の息なること感じて
生くること也。
自分無く 自然無く 息一つになること也。
この世の最初にあった息を
今 しつづけること也。
五風十雨 しかし天は晴れている也。
この世のこと
動かざる無きも
又いつも自づから静まる也。
静かなるのみ 自然也。
あくせく工夫と細工に頭を熱くすること
治療に非ず。
自然の息に生くる者 自づから時を感じ
機に動く也。
その病むも 治るも自然の波也。
その息の張弛する如く
いつも自ら整ふ也。
生くるも 死するも 自然也。
その息の張弛して整ふが如く
自ら在る也。
治療といふこと
為して焦らざるは
天行の健やかなるを知る人也。
この人自然の息に生く。
息長ければ 光も速きに非ず
万年も長きに非ず。
山の高き 海の深きは
高きに非ず 深きに非ず
ただ人の息短き也。
自然といふこと 山にあるに非ず
河の流るるに非ず
花の咲き散るに非ず
ただ我が息すること也。
自然の息に生くること也 動くこと也。
我が治療すること也。
良き治療家
生く可きを生かし
死ぬ可きを死なしむ。
殺す可きに会わず。
治る可きを治らしめ、
治らざるに会わず。
常に楽々悠々
いつもすらすら動いて自づから静か也。
気張らず 努めず 焦ること無く
その息乱れること無き也。
一人の病むも 宇宙の病むなり。
宇宙平らなれば 万人病むなし。
宇宙己でに平ら也。
治療する者又平ら也。
治療する者平らに非ずして病む人あり。
一人の苦しみに会うも
良き治療家に非ず。
殺す可き一人あるも
治療する者 平らならざる也。
人の病むは 人の故に非ず。
治療する者 平らなれば 病む人なし。
良き治療家
宇宙と共に息し 共に動いて
その息一也。
治療する者の一挙手一投足
是自然の動き也。
我がもとに 悩む人 病む人来るも
之自然の動き也。
治療といふこと
我がもとに人の至り、
自づから治ること也。
我に至りて治らざる者あるは
我の病む也。
我が病むは我がある為也。
我無くしてのみ治療家たり。
治療といふこと
技によりて為すに非ず、
機によりて為すに非ず。
我が息静かにして乱れざること也。
我が息 自然にして
我無き息によりて為す也。
その在る あるに在らしむること
治療といふ也。
わが治療といふこと 斯くの如く也。
『治療の書』再版について 野口晴哉
前文略 元来『治療の書』は、私が、まだ治療ということを懸命に為していた時、自分の為に記したようなもので、売るつもりでも、他人に理解してもらうつもりで書いたものでもない。それに、現在の私は整体指導をして治療は捨てたのであるから、(出版は)全く思いがけないことだった。
後文略
写真
by Hitomi スマホ
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