深い眠り 〜野口晴哉著「風声明語2」〜

《野口晴哉著 風声明語2より》

深い眠り

人間の必要な眠りを、二十四時間を三等分しての八時間説などは、観念論に過ぎぬ。

しかし、病気を経過するために、五時間も七時間も眠ることも時には必要である。十五時間も眠っていた人がある。これを無理に短くする必要はない。

ただ、「眠らねばならぬ」と思い込んでいる人に、私は「深く眠れ」と言うだけだ。そういう人々は眠りの時間さえ縮めれば自ずから深くなる。

眠って腹で呼吸している人は健康だ。胸で呼吸している人は夢を見る、しかもその眠りは浅い。肩で呼吸している人に至っては不整体者だ。目覚める前に仰臥して眠っている人は整体者だ。

片側だけ疲れる人は、疲れない側を下にしている。腰の疲れている人は、膝を立てて眠る。胃の悪い人は脚を組み、呼吸器の悪い人は、その側の足をくの字に曲げる癖がある。

それ故、寝相はその人の疲れている場処でいろいろと異なる。

しかし丈夫な人は浅眠期から熟睡に至る頃は仰臥になっている。

仰臥して眠るのはすべて疲れている人だ。しかしねぞうの悪いのが悪いのではない。それは起きている時の疲労の不均衡に対する平均運動だ。無理に正しく寝るようにする必要はない。

疲れが偏っている人が仰臥しなければならぬと思って仰臥して眠る癖をつけようとすれば、矢張り体には無理が生ずる。眠る前には自由な形がよい。寝相は自分に適うことが何よりである。

どうしても眠れない人は起きているのがよろしい。
人間は眠るために生きているのではない。

写真
by H.M. スマホ

やさしい野口整体

〜野口裕介(ロイ)先生に捧ぐ〜 Facebookページ「やさしい野口整体」に宮崎雅夕先生が投稿された記事の保存版サイトです。