ヘリコプターの音 〜野口晴哉先生の質問に答えて〜
≪野口晴哉先生の、質問に答えて≫
〈質問〉満一歳になる男の子です。ヘリコプターが音を立てて近寄ってきますと、恐がって泣きながら飛び付いてきます。抱いているときは泣かないのですが、一人で遊んでいる時は何時も恐がります。また人形を恐がります。なるべく見せないようにしていますが、どんな所でどんな人形と出合わないとも限りませんので、恐くないということを教え、分からせる方法をお教え下さい。
〈答えて〉
ヘリコプターが、ブルンブルンと音を立てて近寄ってきても恐がらなければ、それは耳の悪い子供です。親の怒鳴る声よりも余程大きな音を立てる。だから親にかじりつく方が自然です。異常ではありません。
また抱いている時には泣かないということは、それほど親が信頼されているということですから、これはお喜びになっていい。その親を信頼する心が逆に他の人を警戒したり、人形を恐がったりするのです。
大人でも見慣れていれば恐くないけれども、夜など一人でジーッと見詰めていると、不意に笑いそうな感じになったり、泣き出しそうな顔になったり、いろいろな顔になって恐いものです。
文楽の人形などは、無感情のようで感情があるように動くところが全く恐い。もっとも生きてる人間の中にも、人形と同じような表情の人もいますが、これもまた恐い。だから赤ちゃんが人形を恐がるということは、そのままでいい。
逆に何時までも人形を恐がるような純真な気持ちで生きていってくれるといいと思うのですが、残念なことに人間は一年四ヶ月ぐらいから、人形を人形として客観的に見るようになってきますが、丁度今の時期が客観と主観の混同で、親は分かるが他の人は全部敵と思っている。
そうでなかったら、みんな同じように目は二つあるし、鼻は一つなのですから親だけを好きになるわけがない。
誰でも人相の良い人の方が好きになるのが当然なのです。けれども、いい按配に主観と客観を混同する時期があって、見慣れた親の方が安心ができるという傾向がある。
しかしそれが祟って、成人してからお嫁さんを探すの時でも、親に似た人を探すようになるのです。またそういう人が綺麗に見えるのです。
だから親は自分の顔を利用して潜在意識教育を行っているとも言えるわけです。それが一年半も過ぎると、自分と他人の区別ができるようになります。人形を恐がる純真な時が、潜在意識には一番良い時期です。
だから無理に人形を恐がらせない方法を考えなくてもいいのです。それよりお母さんが時々いろいろな顔をして見せた方がよい。怒った顔、泣いた顔、目を瞑った顔、ぼんやりした顔、そういう顔を見せていますと、赤ちゃんは大人の顔がこのように千変万化するものだということを認識すると同時に人形も恐がらなくなります。
写真
by H.M. デジカメ
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