暗示からの解放 〜野口晴哉著「潜在意識教育論」〜
≪野口晴哉著 潜在意識教育より≫
暗示からの解放
前文略
それよりも間違った暗示から解放されることの方が必要である。
今までに無意識に受けている暗示を壊してゆくことが必要である。
私は長い間病人を観てきたが、人は病気をしている間親切に扱われ、治ってから普通に待遇されると。何か急に冷淡に扱われているような気がして、もう一回病気になりたいという心が起こり、そのために病気を一生懸命握っている人が少なくないことを知っている。
そういう人にいろいろなことをやっても治るわけがない。病気をしているから大事にされて威張っていられる。
そこで時々吐いたり、下したり、あそこが痛い、ここが痛いといっては自分が病人であることを説明しようとする。
けれども、下痢をするのだってちょっと心配しさえすればよいのだし、熱を出すのだって空想すればすぐに出てくる。
だからそういうことをやる人は、もう体の中には治る要求が起こっていると言ってよい。
もっと図々しいのは医者の検尿表や検熱表をかざして平然と病人であることを示している。ところがそうしているうちに、今度はそういうものに暗示されてまた病気をつくり出す。
それに暗示を与えて治そうとすれば暗示同士の闘いになってしまう。だからそういう場合でも、暗示から解放して正気を取り戻させることの方が必要なのである。
暗示というものは、よくなる暗示より悪くなる暗示の方が多い。薬の宣伝など読んでみると、探し出せば誰だってその中の一つくらいは当てはまる兆候がある。
そして人間というものは良い暗示より悪い暗示の方が早く入ってしまうようにできている。中略
私はそういう心のはたらきを利用して、暗示を与えているということを全く悟られないように、また相手の固定観念を壊しているのだということを少しも悟られないで、その正気を呼び起こしているのである。
これは私にはできるが、しかし皆さんがこれから勉強して暗示などということをやろうと考えたりすることは余分なことだと思う。
むしろ自己開発の方法は、暗示によって出来上がっている自分を一気に叩き壊して、本来の自分を呼び起こすことである。
写真
by H.M. 筆ペン画
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