則天去私 〜野口裕介(ロイ)先生講義録〜
《野口裕介(ロイ先生)講義録より》
則天去私(天に則り私を去る)
前文略
四、五十年ぐらい前のことでしょうか、その活元生活を講義する時に野口先生がこういう話をされていました。あるお寺で講習会を開いたら、そのお寺に額が掛かっていた。その額には「天に則って私を去れば心は自ずから閑か」と書いてあった。
この「則天去私」という言葉は、漱石が晩年大変大事にした言葉だそうです。野口先生はこの「則天去私」ということを活元生活に結びつけてお話しておられた。
言葉は難しいけれども、言っていることは簡単です。自分の中の自然に任せて、天に任せて、私というものを去るのだと。
一つの大きな存在として自分というものがあるのでしょうが、野口先生は「自分の体の中にある自然を活かして余分な思い煩いをしなければ誰でも丈夫になるのです。もっと丈夫になろうとか、病気と戦って勝とうとか、こういうことを健康法にしてやろうとか、そんな風に考えるから自分の中にある自然の力が出てこないのです」とお話しされている。
まあ「則天去私」というのは活元運動の世界と全く同じで、天心になって活元運動をしている、そういう状態のことを言っているのだと私は解釈していますけれども、活元生活ということを端的に表している言葉でもあると思います。
中略
今、人間の社会では「自然を守ろう」というようなスローガンをかかげています。新聞でも雑誌でも「自然を守ろう、自然を破壊するな」と書いています。けれども何を守れば自然を守ることになるのかよく分からない。
また、自然を破壊すると言っているけれども、自然は破壊できません。自然というものは破壊できるようなものではないのです。
今、世の中で自然を破壊すると言って騒いでいるのはどういうことかと言うと「人間が滅んでしまいますよ」ということを言っているだけなのです。
皆生態系が狂ってしまうと本気で心配しているけれども、人間が滅んだとしても、自然はまた何十億年もかけて生命を中に培っていくのでして、自然を破壊するなどと言うことはおこがましいのです。
ただその前に人が滅んでしまうと心配しているからそう言っているのです。
中略
活元生活ということを考えた時に、それは私たちの体の中に元々にある一つの生態系を活かしていくということなのかもしれない。
今のような行き方ですと、文明が人を滅ぼすことは十分有り得ることです。子供を育てる時に、熱も出さない、風邪も引かない、病気には一切させないと言って育てていると、そういう状態で育った子供たちは皆ヘナヘナな子になってしまう。
熱が出ましたと言っても、それを自分の力で乗り越えて初めて抵抗力というものが身に付いてくるのです。そうやって一つずつ身に着けていかなければならない。風邪を引いたと言っても、風邪をきちんと経過することで抵抗力が生まれるのです。
風邪を引かないのが良いのではなくて、風邪を引いて上手に経過をさせることで一つの抵抗力が生まれ、丈夫になっていくというように考えないと、人を滅ぼしてしまうことになりかねません。
そういう意味でもう一度活元生活というものを、皆が見直さなければならないと思うのです。
写真 佐賀市大和町にて。
by H.M. デジカメ
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