運の研究 2 ~野口裕介先生(ロイ先生)講義録~
≪野口裕介(ロイ先生)講義録より≫
運の研究(2)
前文略
ところで、ダーウィンの「進化論」は、二十世紀における考え方に大変大きな影響を与えました。自然淘汰説、適者生存といって、多様な生物の激しい生存競争の結果、より環境に適応した変異個体が生存し、その人の変異を子孫に伝える。そのために生物は次第に環境に適応した方向に向かって進化するという考え方です。
要するに環境に対して適応できたものが、その時代その時代を生き残れるだというのです。適応できないものは、たとえ力があっても滅びていると考えるわけです。
この「進化論」は二十世紀の考え方に大きな影響を与えており、例えばヒトラーなどはそういうダーウィンの考え方をうまくというか、悪く取り入れたのですが、民族主義に取り入れた。
そしてゲルマン民族が最も優れている。だから劣る民族は滅びてもいいというような愚かなことを考え出してしまったわけです。
しかし、その適者生存という中に運というものはないのだろうか。激しい生存競争に生き残った優れたものという中に、たんに運がよくて生き延びているというものがないだろうか。
もちろん運しかないというのもまた困るのですけれども、運もまた力なのです。小さいから、弱いから滅びるかというと、そうではないでしょう。
例えばゴキブリなどは小さくてすぐ踏みつけられそうだけれども、もう何億年と生き延びている。人間に捕まるような、スリッパで叩かれるようなゴキブリは、運が悪いというよりは活きが悪いのです。
死にかけているゴキブリが叩かれて潰されてしまうだけで、元気なゴキブリはそんな簡単に人に捕まるものではありません。適者生存といっても、そう考えると、弱いから滅びるというわけではないということが分かります。
逆に強いが故に滅びることだってあるのです。力が余り過ぎて、そして滅びてしまうことだってあります。十八世紀、十九世紀の世界地図を見てみると、ヨーロッパの文明にはとてもかなわないなと思う。
西洋文明が世界を支配している。ちょっと前までの世界地図を見てみると、世界中みんな赤く塗ってあります。要するにすべて英国の植民地ということです。
そのヨーロッパの国々も力があり余って自滅していく。二回の戦争をやったおかげで、勝手に自滅してしまった。
ですから、力があるから、強いから生き残るとも限らない。また弱いから滅びるというわけでもない。やはりそこには運というものがあるのかもしれません。
つづく
写真
by H.M. デジカメ
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