依存期における独立の要求 〜野口晴哉著「潜在意識教育論」〜
≪野口晴哉著 潜在意識教育より≫
依存期における独立の要求
子供だけでなくて、大人になっても依存の時期が続いている亭主がよくある。二十歳になっても三十歳になっても、小児期を脱却していない男がいる。
会社に行けば、上役に褒められようとして、上役の注意をひくような動作ばかりをする。家に帰れば、奥さんの注意が自分に集まっていないというのでブツブツ叱言を言う。
中略
独立していないうちは自分のことだけしか考えない。子供が勝手だと責めるが、それは子供がまだ独立していないからである。独立すれば他人がそれをどう考えるか、他人に迷惑がかからないかという思いやりが出てくる。
そういう依存期を脱却していない大人達は、講習会などにきても、時々わけの分からない質問をして「我ここに在り」と示したがる。
これは一見独立の現象のように見えるが、不安の表現であるとも言える。どこか他人と変わっていないと不安である。そのために「我ここに在り」ということをわざわざ主張するのであるが、そういう場合には、その人はまだ依存の時期にあると見なしてよい。
そういうように大人の中にも依存期の人達がたくさんいる。依存の時期に快感があると、大人になってもなかなか止めない。ということで依存期というのは存外長く続いている。
子供は大部分依存期にあると考えてよいわけで、この時期には、叱っても褒めてもそのことはわからない。ただ周りの人の注意の集中密度だけを感じ、それを要求しているのである。
その依存期にあって、しばしば独立の要求を起こすことがある。
独立の要求を起こすということは、独立していないからである。
「俺はこういうことができるぞ」と腕を見せたり「自分のことは自分でやるんだ」と宣言したりするが、これは独立の可能性を人に示している依存期の行動なのである。
この時期になると、私の道場に来ている子供達でも、今まで親の手を借りて伏せになっていたのが自分でハンカチを揃えて伏せになろうとする。
そういう場合には、私はその独立の要求に応え、ちゃんと手を下げさせてキチンとするのを待って操法をし、大人と同じように痛みに耐えるように待遇してやる。
写真
by H.M. デジカメ
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